3月下旬。「雪の中に入れといたりんごを掘り出すから見においで」と誘われ、温井(ぬくい)まで行ってきました。
私が住んでいる飯山の市街地には、もう雪がありません。飯山で4回目の冬を過ごしましたが、この冬は12月中旬にまとまった降雪があったものの、その後は比較的おだやか。年々雪が消えるのが早くなっているなぁと感じます。
飯山市内を北へ向かって車を走らせること25分。道路には雪はありませんが、市内でも豪雪の地として知られる温井にはまだたくさんの雪が残っていました。
雪の中から、りんごから甘い香りが…
りんごを保管している場所に行くと、すでに周囲が除雪され、りんごが入っているコンテナが見えていました。近づくと、ふわっと甘い香りがします!
雪をどけてブルーシートをめくると、真っ赤なりんごが登場。この日は天気が良かったこともあり、つやつやしたりんごが、きらきらと輝いて見えました。
作業するスタッフからも「きれいだなぁ」という声が。
このりんごは、ちょっと小ぶりなサンふじ。
見た目も良いし、手にすると、ずっしりとした重みを感じます。
2か月半ほど雪の中にいたりんごを半分に割ってみました。その場で食べてみると、シャキシャキした食感に、たっぷりの水分!
もうすぐ4月になろうかというこの時期に、こんなにみずみずしい感じのりんごを食べられるのはうれしいところ。さわやかな甘みも感じられます。
雪の中は、雪の厚みなど条件によりますが、湿度約100%、温度約0度の“高湿度低温状態”が安定して保たれます。そんな環境下でりんごは、凍らないように自ら糖分を増やすことで熟成されます。
温井の雪を活用するプロジェクト
この雪中りんごのプロジェクトは、温井の村づくり委員会と飯山中央市場株式会社が協力して、2014年から始まりました。
例年5月まで雪が残る温井にて、近隣の山ノ内町で収穫されたりんごを預かり、1月中旬から3月下旬まで雪の中で保管・熟成させてから「雪中りんご」として送り出し、飯山中央市場を通じて販売されます。
1年目の2014年は100ケースではじまり、今回2021年は1,000ケースのりんごを雪の中で保管しました。
(ところで、どうしてりんごが飯山市産でないの? と思われる方もいると思いますが、雪が多いことなどから、市内では果樹の大規模な栽培が難しいとのことです)
雪国では昔から大根や白菜、キャベツなどを、天然の冷蔵庫ともいえる雪の中に入れて保管し、冬の間少しずつ取り出して食べるということが行われてきました。
目の前にある雪は環境に優しいクリーンなエネルギー、しかも熟成されておいしくなる。雪国の生活の知恵には思わず感心してしまいますね。
温井の「雪中りんご」販売について
雪の中から掘り出されたりんごは、市場のスタッフにより手際よくトラックに積み込まれていきました。温井の「雪中りんご」は、北信越エリアを中心とした「イオン」で販売されます(飯山市の近くでは、イオン中野店、イオン上越で販売)。
また、愛知県のスーパーや大阪の生協でも販売されます。
国道117号沿いにある民設道の駅「いいやまぶなの駅」では、4月中旬からゴールデンウイーク前あたりまで販売予定とのことです。
見かけたらぜひ食べてみてくださいね。